マンガもSNSもブログも読まれる瞬間まで”誰もいない”

マンガが大の苦手だった娘(小4)。
SPY×FAMILY、薬屋のひとりごと、斉木楠雄のΨ難などなど、何度かおねだりされて、トライしては、ことごとく玉砕してきました。

マンガって、一見ハードルが低そうなイメージを持つ人も多そうですが、実は、意外とテキストが多いメディアです。「薬屋のひとりごと」はもともと小説が原作ですし、ヒカルの碁、味いちもんめ、風の大地など、作画家とは別に、脚本家がいる作品も存在します。

もちろん、マンガならではの作画やコマ割りといった視覚的な効果で演出、補完もされていますが、案外テキストも読めないと、いまひとつ楽しめないマンガも少なくありません。

そんなこんなですっかり「マンガは苦手」と敬遠していた娘が、3巻一気読み!してしまった作品がこちらの作品。

『シバつき物件』大森えす著
柴犬の「地縛霊(ジバ犬)」のむうちゃんと暮らすことを条件に激安物件に入居した百瀬氷。不器用な主人公の氷とむぅちゃんの間で交わされるやりとりにキュンとします。

*マガデミー賞で「表紙インパクト賞」を受賞した作品ですが、本編で繰り出されるむぅちゃんの表情もジワっとくる。柴犬の飼い主にとっては、思わず我が子を抱きしめたくなる作品です。

「シバつき物件」は特別テキストが少ないマンガではありません。それでも夢中で読めてしまったのは、彼女の日常、うちで飼っている豆柴のこむぎの表情、しぐさ、体感、五感の記憶と直接結びついたのはもちろん、「ジバ犬むぅ」や登場人物たちの繊細な表情や、やりとり繊細な表情や、やりとりに温もりが感じられたからでしょう。

「こむちゃんと過ごす時間はずっとじゃないんだよね。もっと大切にする。」

この作品に出会ったことで、そんな気持ちの変化まで起こったようです。

このマンガでKindleデビューまで果たした娘は「早く4巻が読みたい!」と楽しみにしています。(第4巻は7月4日発売予定です)

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マンガもブログもSNSも読まれる瞬間まで”誰もいない”

W.J.オングは、その著書『声の文化と文字の文化』の中で、「書き手の聴衆はつねに虚構である」と書いています。

書き言葉は(マンガも)、読まれるその瞬間まで、誰もいません。会話するときのように相手の応答の質感をすぐさま感じられないことが、書くことを難しくしている、と述べています。

それでも、マンガ嫌いの娘が、はじめてマンガに夢中になれたように、書かれたものが、読み手の内側にある何かと共鳴し、もっと読みたい!続きが買いたい!(愛犬こむぎと)一緒にすごす時間をもっと大切にしたい。そういう気持ちに火をつけることもあります。

単純に「書き言葉」を繰り出すだけなら、”会話なみのスピード”で言葉を繰り出せるAIのスピードを人間が超えることは、もうありません。

AIをつかった文章の”是非”について論じられることも多いですが、私はAIを使うこと自体が悪いことだとは思いません。私自身、自分を超えた実力の恩恵にあやかることも増えています。

問題の核心は、自力で書くか、AIを使うかではありません。何を、誰に、どう伝えるか。なんのためにそれを書くのか。そういった「言葉のコンセプト」が抜け落ちたり、ズレていたら、何をつかっても”読み手不在”の文章になってしまいます。

書き言葉は「視覚」から入るデザインである

さて、話しことばと違い、書きことばはまず「視覚」から入ってきます。書かれた言葉は、お客さまから「見える」デザイン領域のひとつであり、思っている以上にお客さまの「印象」を左右するものです。

とはいえ、「操作された印象」に人は案外、敏感です。ひょっとしたら、最近はAIによるクオリティの高いビジュアル作品の嵐に、ちょっぴり疲れた・・・そんな生身の人間らしい感性をもった方もいらっしゃるかもしれません(笑)

私たちは、必ずしも完璧にうつくしいものや、整ったものに惹かれるのではありません。生の質感や、手触り感、自然か不自然かは、言葉にできずとも感じていますし、実際、そういった自然なものが好きだったり、大切にしたいという人もたくさんいるでしょう。

「言葉はデザインである」という観点でいうと、その人、その企業、そのプロダクトが、お客さまから見て、もっとも自然で、もっとも魅力を感じられる部分を見抜くことの方が先、ということになります。

コンセプトが変われば、それまでの書き方や言葉のデザインがすべて”無効化”されるくらいのインパクトを持っています。着手すべき順番を間違えるとイチからやり直しになってしまう、ということです。

とはいえ、自分たちがどう見えているのか、魅力の源泉や、印象にまつわる領域は、なかなか自分では気づいたり、言語化することができなかったりもします。

鏡に映った自分でさえ、左右反対になっているように、自分の思う自分たちの印象と、他者からの印象には、わずかながら”ズレ”があるものです。自分では気づくことのできなかった、非言語の領域を客観視することで、コンセプトに関わるヒントが浮かび上がってくるかもしれません。

自分のビジネスに、なんとなく違和感を感じつつも、その正体を明らかにできずにいる・・・そんなモヤモヤを抱えている方がいらっしゃいましたら、まずはお話ししてみませんか?無料でご案内しております。




書いた人

ろっぺん書房 
経営者専門ライター
TOMOKO

忙しい経営者様に代わって発信による経営支援を行います。業績向上や採用からブランディングまで、様々な経営課題の解決に経営者の声を届けることが重要な時代。AIには書けない「体温のある言葉」でビジネスを活性化します。大手メーカーでの広報やライター養成講師、出版プロデュースの経験多数

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