最近、過去のブログ記事を見返していたら、ちょっとした「お宝」を掘り当てました。当時の私には、結びつけることができなかった点と点がつながり、同じ素材からまったく別の記事を仕立てられそうな予感がして、ワクワクしています。
正直に告白すると、私の一番の「好物」は文章を書くことではありません。
「これだ!」という衝撃が走る。そんな「光る素材」を探り当てる「瞬間」が、最高に好きなのであって、いざ、文章を仕立てていく作業に入ると、人並みにうんうん唸ったり、悩んだりもしているのであります。
といいつつ、「書くのが好き」と答えていたワケ。
そんな私ですが、つい最近まで人から聞かれれば「書くのが好き」と答えておりました。いや、嫌いではないのですが、「三度の飯より好き!」みたい人たちと比べると、そこまでではないのかなって思ったりもする。
では、なぜ、そう答えていたかというと、他人が聞いて「わかりやすいから」ですね。多分、一番好きなのは「書かずにはおれない」そんな何かと出会えたときがいちばん幸せです。
「好き」の正体って、ほんとうはごく小さな「粒子」のようなもので、人に説明したところで、わかってもらえないようなものこそ、実はホンモノなんじゃないかって思うんですよね。
「誰かの理解」が得られずとも、自分の中では強烈な存在感を放ち、行動まで牽引するエネルギーを持っている。小粒でもピリリと辛い「山椒」のような何かこそ、「ほんとうの好き」なんじゃないでしょうか。
みなさんは、自分の「好き」の正体、掴んでいますか?
というわけで、今日はあなたの「好き」の正体を掴み、ブランディングのヒントにもなるかもしれない、「感覚」のお話でございます。
「感覚」だなんて、ずいぶんと曖昧なテーマだな・・・と思ったかもしれませんが、これまでの正解が効力を発揮しなくなってきている世界を、さらに楽しんでいくための「根源の力」といっても過言ではありません。というわけで、さっそく参りましょう!
自分の「独自の感覚」を信じ、価値にかわる「文脈」を発掘する
自ら「スーパースターファーマー」「クレイジーな社長」と名乗る、梶谷農園の社長、梶谷譲さんをご存知でしょうか。
人によっては「雑草」と見てしまうような素材も、彼の手にかかると、三つ星レストランのシェフが唸るほどの主役に変わる、そんな雑草・・・いや、ハーブを届けておられます。
彼が農業を始めた当初、ハーブは青果市場で「飾り」としてしか扱われていなかったのだとか。そんなハーブの価値を根本から変え続け、今では150もの取引先をもち、三つ星レストランからもひっぱりだこという、自他が認めるスーパースターファーマーです。
価値を予感する「感覚」を研ぎ澄ませ、更新し続ける
梶谷社長は、今も山をめぐったり、世界中のレストランを巡り、実際に自分の舌で味わうこと、シェフから直接話を聞くことを欠かさないそうです。それは、常に自らの「独自の感覚」を研ぎ澄まし、その価値を他者と接続する新しい「文脈」を発掘するための行為なのでしょう。
ですが、わたしたちが実際にビジネスの現場に立っているときはどうでしょうか。自分の感覚で何かを感じつつも、それらに価値ある形や意味を与えることに、「難しさ」を感じる人も少なくないと思います。
なぜなら「感覚」は、それ自体に決まった答えや正解があるものではないからです。
おまけに「感覚」で捉えるものは、最初からすっきりと明瞭に感じられるものばかりではありません。曖昧で、不確かで、なんとも頼りない。まだ人に説明できないし、言葉にするのは早すぎる…。でも、自分の中では確かな存在感を放っていて、忘れることができない。
そういった「曖昧なもの」を自分の中に留め置くには、物質的にも、精神的にもコストがかかります。 当面の間、その価値を信じられるのは自分だけであり、今すぐ価値や利益に変換できるものばかりではないからです。
「わかる」ものだけを残し「わからなさ」を削ぎ落とす方がよっぽど簡単で、受け取る人に「何か」を感じてもらえるようになるまでの道のりや時間を思うと、諦めたくなる瞬間の方が多いかもしれません。
ほんとうに価値あるものはひっそりと、ただ存在している
梶谷社長が、山で見つけてくるハーブのように、あなたと、あなたのお客さまになる人たちにとって本当に価値あるものは、静かに、ひっそりと、ただ存在しているだけかもしれません。
自分から「ここだよ!」とわかりやすくアピールしてくるものなら、とっくに誰かが見つけています。あなただけがその価値を伝える、唯一の存在にはなり得ないでしょう。
あなたにとって、長期にわたって本当の利益をもたらしてくれるのも、ブランディングにつながるのも、そんな息を潜めて、ただ存在している何かを「感じる」ところからはじまるのではないでしょうか。
今は、たしかに特段の力を持たず、ものを言わず、無抵抗な存在かもしれない。
むしろ、ほとんどの人が通り過ぎていく、そんなささやかなものほど、大きな力を秘めているかもしれないのです。
そういったささやかなものに、小さくとも少しずつカタチを与えていくには、自らの感覚を信頼し、日々研ぎ澄ませながら、ひっそりと存在している何かに心を留め、ひとつひとつ、自分の信じる「粒子」を紡ぎ出していくしかありません。
やがてその「粒子」が、「波」となって伝わる瞬間が訪れたとき、ほかの誰かからも、あなたのブランドのもつ景色や約束を感じられるようになっているはずです。
【編集後記】
本文中、いくつか引用させていただいたのは、東京藝術大学で教鞭を取り「野口体操」を教えておられた、野口三千三さんの言葉です。
私は縁あって、数年間、「野口体操」を教わっておりました。もう十年ほど前のことです。すでに野口先生は亡くなっておられたので、そのお弟子さんと著書を通じて、野口先生の言葉に触れていたのですが、その言葉の断片に触れただけで、どうしようもなく惹かれる自分がいました。すでに絶版になっていた本を何冊も取り寄せたほど。
当時は、なぜ、それほど惹かれるのかよくわからなかったのですが、「感覚こそ力だ」とおっしゃられていた野口先生の教えに、やっと時代が追いついてきていて、これからの時代に必要なことをたくさん伝えてくれていると「感じて」います。
私が言葉にできるのは、教えのほんの一部に過ぎませんが、また折をみて、少しずつご紹介できたらと思います。
TOMOKO
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