好きなこと、夢中になれること、そんなものは、この厳しい世間を生きていくのに何の役にも立たない。そう自分を言い聞かせて、これまで走り続けてきた。「好きなことは仕事じゃなくて、趣味のままにしておく方が幸せだよ。」これもどこかで聞いたセリフだ。だけど、気づけば週末の趣味すら楽しむ気力がなくなるほど、仕事に自分を費やしてきた私の心に、一体、どんな喜びがあったというのか。
私たちが生まれてくる目的も、生きる喜びの原点も、今、目の前にいる娘が教えてくれているんじゃないだろうか。「こんな無邪気に自由奔放でいられるのは、子供のうちだけよ。」そう言うのは簡単だ。
でも、それって本当だろうか?私はまだ、その答えを自分で確かめたことがない。かつて、誰かにそう言われてきたことを鵜呑みにしてきただけで、自ら確かめて、自分なりの答えをもっているわけではないのだ。
育休も後半にさしかかったある日、私は「この世で一番美しいと思うもの」を追求する道へと飛び込んでいた。これまで積みあげてきたキャリアを手放すなんて、それまで一度も考えたことがなかった。不安がなかったといえば嘘になるけれど、毎瞬、私に新しい世界をみせてくれる、可能性の塊みたいな娘を見ていたら、私も新しい可能性に向かって、一歩踏み出さずにはいられなくなったのだ。