わらしべ読書de読書感想文
この講座を受けたのは、自分が書くためではなく、小学生になった娘のためでした。
読書感想文は私は大の苦手で、夏休みの最後の最後まで残っている宿題だったからです(笑)
でも、娘に伝えるからにはその良さや書き方を自分でも知っておかなくては・・・
そう思い手に取ったのがミヒャエル・エンデの『モモ』でした。
結果的に、私はこの何気なく手に取った『モモ』で、読書感想文トレーナーになることまで決めてしまうことになったのです(笑)
2022.9.25追記)なんと『モモ』の感想文でU5BOSS賞をいただきました
U5BOSS というのはこのわらしべ読書de読書感想文の考案者の川原悠伍(かわはら ゆうご)さんです。

ちなみに、トレーナーになるまでの10冊の読書感想文は、娘とわちゃわちゃと講座を聞いていて、
タイトルのつけかたを完全に聞き落としていたため、かなり微妙です(笑)
でも、そのまま掲載しておこうと思います。
モモは私たちの中にいる
わらしべ読書感想文 01 『モモ』
モモは、わたしたちの中にいる ろっぺん
正直ショックでした。
エンデが伝えたかったことのほとんど何も私は捉えることができていなかったんだと。この本をはじめて読んだのは、小学5年生のとき。なぜなのかわからないけれど、ずっと心がざわついて、なかなか物語が頭に入ってこない。そんな本だったのに、外側がオレンジ色でしっかりとケースに収まったこの本がいつも気になっていました。なぜこの本が私の心を捉えるのか、心がザワザワするのか、不安を感じるのか、その正体がわかりませんでした。
とにかく気になって仕方がない。けれども、私にとって『モモ』は読みたくてたまらない本ではありませんでした。むしろ逆で、読むのが憂鬱な本だったのに、何が自分の心を捉えるのか、その正体をつかみたくて、私は小学5年生、6年生と2度も、この本を課題本にして読書感想文に挑戦しました。でも、感想文はちっとも納得のいく出来にならなかったし、ザワザワの正体もつかめなかったのが、この『モモ』という本です。
当時感じていたのは、自分がすでにこの灰色の世界の住人になっているのでは、ということ。でも、どうしたらその灰色の世界から抜け出せるのか、その手がかりを得たいのに、一向に不安を払拭することができませんでした。だから、ずっと気になって仕方なかったのだと思います。このお話のように、モモのような素敵な少女がどこかから現れて、自分を、世界を救ってくれたらいいのに・・・でもそれは叶わない。そう思っていました。
自分の胸のうちに起こるざわめきも、そして自分が何をしたらいいのかも、そして未来に対する希望も、当時の読書感想文には書けなかった。そんなかつての私に、もしメッセージを届けられるとしたら、なんて伝えるだろう?と思い、今回の課題本として『モモ』を選択しました。
「あなたの感じている不安や心配こそが、あなたが望んでいる素晴らしい世界にガイドしてくれる『モモ』なんだよ。」
モモは、いつだってあなたのそばにいて、自分が進むべき道をガイドしてくれているよ。モモを無視したり、見失ったらだめだよ。モモといっしょに、自分の向いたい先にゆっくりと、でもあゆみを止めずに進みつづけるんだ。そうしたら、必ず自分が見たい世界の住人になれるよ。
こう伝えて、小学5年生の私はわかってくれるでしょうか。不安がモモだ、なんて、全然信じてもらえないかもしれません。それでも「モモの力を借りられたらいいのに」と思っていた当時の私に伝えたいのは「モモはいつでもあなたのそばにいる」ということです。
エンデはきっと、この先の時代がどうなっていくのか、灰色の選択を重ねてしまう人たちでいっぱいになってしまうことを、とても心配していたのだろうと思います。もちろん直接、大人たちに警笛を鳴らすこともできたけれども、誰にも知られないように、私たちの心に生涯、永遠の長さをもってひびき続けるメッセージを送り続けたかった。だから、こどものうちに手に取ってくれる童話という形を選択したのかもしれません。『モモ』を通じて伝えたことばが、読み手の中で本当に熟しはじめたとき、「すばらしい人生を生きています」そんな返事であふれることを願って、この『モモ』という作品に昇華したのかもしれません。
ゆっくりすすむほど早く進めるという不思議なカシオペイアの存在に隠された真のメッセージは、人はみな「気がかり」という追手から逃げることばかり選択して、その方が早くすすめると信じているけれども、ほんとうは逆なのだと伝えていることに気がついたとき「なんてことだ!」と愕然としました。わらしべ読書をしていなかったら、気づかないまま人生を終えていたかもしれません。恐ろしいことです(笑)
遠回りに思える気がかりを逆に利用して、ひとあしひとあし、いそがず、でも立ち止まらずに進み続ければ、いちばん早くたどりつける。それなのに、私たちはその大切な手がかりを手放し、逃げて、ひたすら消耗しつづけながら一日、一年、人生を終えてしまっている。そのことを伝えていたのですね。誰もが、いつだって、目の前の世界をすばらしいものに変えていける手がかりを目前に手にしているのに、望む世界からひたすら逃げまどっていたなんてショックすぎます。
この頃の私は、家の中が冷え切っている、そんな自宅がいやでいやで、家にいたくありませんでした。心をかき乱されることのない場所が欲しかった。両親のもめごとは、自分とはなんの関わりもないんだと思いたくて逃げる選択ばかり続けていました。いつもなら、本の中にいるときだけは自分が守られているような気がするのに、『モモ』を読んでいるとそのざわめきはむしろ大きくなって苦しくなりました。それでも『モモ』という本を嫌いになれなかったし、手放すこともできなかったのは、私たちは命のみなもとでつながっているし、間違いなく、この両親と家族を選んで生まれてきたし、本当に大切なものを大切にできる生き方を学び、伝えることがこの人生の課題であり、自分の役目であることを、心のどこかで感じていたからではないかと思います。
しあわせに生きるいのちをつなぎたい。その胸の内にある一点で、私はエンデと通じている気がします。エンデとは比較にならないほど、おそろしくのろまだけれども、それでも一歩ずつあゆみを止めずに伝えるんだよと。私がエンデとモモからもらったのはそんな勇気です。
ほとばしり出るような空想力をもつジジ、そして、ほんとうになかよしのベッポ、そして、モモに「ことばがおまえのなかで熟しきるまでには長いときが必要なのだよ。それまで待てるかね?」と伝えたマイスターホラ。
素敵な夢が現実になる、本当に力を持った言葉になるのには、時間がかかります。でも、仲間と一緒に、あきらめずに進みつづければ、ちゃんとできるじゃないか。ってことを、モモとわらしべ読書に教えてもらいました。
こどものころから手放すことができぬまま、ずっと気になっていた『モモ』は、わたしの人生にとって1本の「わらしべ」なのかもしれません。300冊を達成する今日、この感想文が書けて、本当によかった。ありがとう、エンデ、モモ。
そしてわらしべ読書をつくってくださった、川原さんと、そのご家族に感謝して。
2022年6月21日
この読書感想文講座をいちばんオススメしたいのは、実はオトナのあなたです。
さて、読書感想文と聞いたら、ほとんどの大人は自分には関係ない。そう通り過ぎてしまうでしょう。でも、私がこの講座をまっさきにおすすめしたいのは、実は、オトナのみなさんです(笑)
お子さんのために受けるという親御さんも、ぜひ「親子で」同じ課題図書で取り組んでみて欲しいと思います。たった1冊の本から飛び出す景色は、驚くほど彩り豊かです。親子で、同じ本でも、みている景色は全然違います。お子さんの感性に驚いたり、感動したり、むしろ教わることもあるでしょう。
どう感じるか、どう言葉にするか。こうあらねばならないなんていう正解はないんだということを、きっと感じていただけるはずです。
私たちはもっと自由に、自分の言葉で表現していい。今は、それが可能な時代です。書くのが苦手だから、なんて自分を閉じ込めないでください。驚くほど豊かな表現力が、私たちには備わっているし、その翼を取り戻してみてください。
わらしべ読書 de 読書感想文講座はこちらでリクエスト開催しております。